過食は一種のルーティーン?
過食や摂食障害を改善してゆく中でとても大切なことがあります。
それは心理的なアプローチと行動的アプローチを合わせて行うということです。
過や摂食障害の根本的原因は無意識下にある「頭に見えない理由」や「隠された目的」です。
しかし、原因となった出来事や分析ばかりにはまり込んでしまって思うように成果があがらない場合があります。
永い間カウンセリングを受け続けてきた方や心理学を学んできた方に多いパターンです。
それらがけして間違っているわけではありません。
それらを理解することはとても大切です。
しかし人によっては大事なことが欠け落ちている場合があります。
「だからどうするか」「それをどうするか」「それをどう変えるのか」ということです。
具体的行動としてどうやってアプローチしてゆくのかが欠けている場合があります。
頭で知ったことと、それを実践できるかどうかは違います。
知識を得たり学んだりして認識が変わることはとても大切です。
しかしそれに見合った行動が伴わなければ本質的には変わらない場合もあります。
ここに過食改善目的で合宿に参加する方々には肉体面や行動面からのアプローチも重視してもらっています。
知識と実践。認識と行動。学ぶことと体験すること。
それらをセットにして落とし込むことこそが最も効果的だからです。
心の問題は無意識下の方程式を通して具体的行動に現れます。
それはその人の肉体的疾患や感情的反応の仕方にも現れています。
ならば肉体的行動や肉体的ケアからも心の問題にアプローチしてゆくことは可能です。
例えば、
身体の動かし方から心の状態に影響を与えることが可能です。
身体のある部分の筋肉の無意識緊張を解くことで解放できる心のブレーキがあります。
その人の体の動きや筋肉に現れる無意識緊張(凝りや痛み)は無意識下に抑圧された感情エネルギーや固定された考え方が表現されたものだからです。
それを利用すれば、自分の身体の硬い部分や痛みのある部分から基となっている無意識下に抑圧された感情エネルギーにアプローチすることが可能です。
それを理解したうえで身体を柔らかくしてゆけば抑圧感情を流しだすことも可能です。
他人との関わりの中で実践する意識的行動によって今まで自分を縛り付けてきた無意識的制限を解除してゆくことが可能です。
食べる時の状態と行動パターンから変化させられる肉体的習慣もあります。
食べ方や食べ終わった後の行動の仕方ひとつから無意識にある自動行動システムに影響を与えてゆくことができるからです。
逆に言えば、そういった行動的アプローチを抜きにするとなかなか過食を解決できない場合があります。
頭の中の理論ばかりになってしまうからです。
頭でわかったつもりになっていても目の前を変えてゆく具体的行動が足りないから現実が何も変わらないということが起きてきます。
それは無意識下にある問題が本質的には何も解決されていないということです。
過食を止めるには内面的問題を解決することが不可欠です。
しかしそのためにはそれに見合った具体的な行動の変化が必要です。
そして実は、行動や行為を意図的に利用する方法があります。
行動的アプローチというより外面的行為と内面的状態を結びつけて利用する方法です。
昨年ラグビーの五郎丸選手の活躍からルーティーンという言葉がブームになりました。
みなさんもご覧になったことがありますよね。
あの両手の人差し指を合わせる独特のポーズ&一連の仕種です。
他にもルーティーンとしてはイチロー選手のバットを立てる仕種も有名です。
フィギュアスケートの羽生選手の陰陽師の構えからの演技スタートも一種のルーティーンになるでしょう。
そんな流行のルーティーンですが、一体何のことなのでしょうか?
どうしてそれが大きな成果を上げていると言われているのでしょうか。
ルーティーンと呼ばれている動作は心理学的にいうとアンカリングのことです。
アンカリングとはある内面的状態と外面的動作を結びつけることを言います。
アンカーとは船が流されないように打つイカリのことです。
つまり自分を取り囲む状況に流されずに、ある状態をキープしたり呼び起こすことを目的として行う動作です。
五郎丸選手やイチロー選手はあの一連の動作を行うことで最高の集中状態を呼び起こしています。
自分にとって理想的な内面的状態と表面的行為をセットにすることで引き出しているのです。
さらに一連の動作の中で最高の成果が上がるという一種の自己暗示をかけています。
それがあれほどのすばらしい成果を上げている秘密です。
実は過食という行為には意識しないままのルーティーンが使われていることが多々あります。
例えば、一人になるとザワザワしてくる。
そしていつものコンビニに走る。
そしてまたいつものお菓子やパンなどを買ってしまう。
そしてさらにそれをいつものように食べて…いつものように自己嫌悪してしまう。
言い換えればすべてがルーティーン化しているのが理解できるでしょうか。
もちろん人によってパターンは違いますし強弱があると思いますが。
過食という行為そのものがルーティーン化されたパターン行動であるのがわかるでしょうか。
もう一度言いますがルーティーンというのはアンカリングのことです。
その行為が自分の内面的状態を引き出してきます。
だから意識しないままに何度も繰り返された一連の行動パターンにはまり込んでしまう。
最初の「一人になる」という状況が引き金となって次の行為を自動的に進める結果となってしまう。
何度も繰り返せば繰り返すほどそれから抜け出すことが不可能なくらいに強くパターン化されてゆく。
行為行動と内面的状態がつながり合ってがんじがらめになってゆくのです。
無意識的な見地からいうと実は過食という望まない行為行動は負のルーティーンで埋め尽くされています。
そこから脱出できないくらい強いアンカーをいくつも打たれ動けなくなっているようなものです。
ならば自分にとってメリットのあるルーティーンを意図的に使いこなしませんか?
自分を苦しめる負のルーティーンを意図的に切り崩しませんか?
ルーティーンは無意識の仕組みと方程式から成り立っています。
それを自分にとってメリットのあるように使いこなせばいろいろなことが可能になります。
それを自分を苦しめる罠のように使えば後悔するようなことばかり起こります。
どちらを使うかは自由です。
それこそが自分の使いこなし方動かし方というものです。
そのために今目の前の行動の選択が重要になります。
意図的に内面的状態と目の前の行為行動をつなぐようにしてください。
意図的な行動を取ることが、次の行動を創り出す自分の無意識内方程式に変化を与えることになるからです。